磁気刺激治療(TMS、rTMS)によるうつ病治療

-うつ病・躁うつ病・線維筋痛症・慢性疼痛・強迫性障害・認知症-

磁気刺激(TMS)治療-うつ病-

磁気刺激での治療とは

磁気刺激での治療とは

つのおクリニックは、都内でもいち早くうつ病治療に効果的な磁気刺激装置(MagPro:マグプロ)を導入いたしました。磁気発生装置はデンマーク製で、アメリカ(食品医薬品局)およびオーストラリアで承認を得ています。出力強度が強く、磁場が脳深部まで届き、水冷式で騒音が少ないため、連続での使用が可能です。
以前から電気ショックによるうつ病治療はありましたが、効果が高い分、身体へのダメージ・副作用が大きく、物忘れや痙攣が起こるという欠点がありました。
1985年、イギリスでアンソニー・ベイカー(Anthony Barker)が初めてTMS(Transcranial Magnetic Stimulation:経頭蓋磁気刺激法)を発見し、1990年代に上野照剛博士によって8の字コイルが開発され、限局した大脳皮質への刺激が可能となり、脳科学研究は飛躍的に進歩しました。

主に神経細胞の軸索を刺激することで効果を発現

TMSの原理は、瞬時的に磁場を変化させることで脳内に微弱な渦電流を発生させ(ファラデーの原理)、それが主に神経細胞の軸索を刺激することで効果を発現します。外部から電流を付加しないため、電気ショックに比べて身体へのダメージや副作用がはるかに少なく、さらに治療後もその効果が続くという特筆すべき長所があります。
薬物療法のように、抗うつ薬とその代謝物がいつまでも体内に残存して、副作用が出ることがありません。薬物療法以上の効果を、はるかに短期間で実感でき、費用も保険診療での長期に及ぶ通院と薬物療法より、はるかに廉価です。何より治療時間の大幅な短縮は、患者さまに多大な利益をもたらすと考えています。

適応症

  • うつ病
  • 躁うつ病(双極性障害)
  • PTSD(外傷後ストレス障害)
  • 強迫性障害
  • 不安(不安障害)
  • 慢性疼痛(脳卒中後疼痛、三叉神経痛、幻肢痛)
  • 線維筋痛症
  • 片頭痛
  • 耳鳴り
  • 幻聴

適応(おすすめの方)

  • 長年の薬物療法でも改善の見られない方、既存の薬物に十分に反応しない方
  • 妊娠を考えている女性患者
  • 現在、新生児に授乳中の女性患者
  • 胎児に対する薬物の影響を心配される方
  • 薬物によるインポテンツを嫌う男性患者
  • 薬物で副作用が出やすい方
  • 薬物療法を嫌う方
  • 通常のうつ病にも適応可能

禁忌

    • 刺激部位の近くに金属(人工内耳、ペースメーカー、DBS(体内刺激装置)、投薬ポンプなど)を有する患者
    • ケイレンのリスクの高いもの(てんかんの既往、頭蓋内病変の既往、睡眠不足、アルコール依存症)
    • 重篤な心疾患を有する患者

副作用

聴力低下、脳波への影響、痙攣(発作は0.1%以下)、失神、局所痛、頭痛、不快感、急性精神反応など。
磁気刺激は日本で使用され始めて25年たち多くの施設で経験され、おおむね安全であるとの評価が定まっています
:磁気刺激法に関する委員会報告、臨床神経生理学30、265-271、2002。

治療の流れ

1ご予約

ご予約

初診時 初回は受け付け順になります。
初診時に、問診、説明、心理テスト、場合により血液検査等を行います。
保険証をご持参ください。
病状を診断し、磁気刺激治療の適否を判定、刺激部位の選定を行います。

二回目以降は予約制になります。

週5回が理想です。

効果蓄積のためには毎日連続刺激が理想ですが、患者様の社会的事情がありますので、許容範囲内で出来るだけ空けないようにして下されば十分です。 20回ごとに、心理テストで改善度をみていきます。 個人によりますが、全体で20~40回の刺激が必要です。

2磁気刺激装置マグプロでの治療

磁気刺激装置マグプロでの治療

専用チェアーに着座後、頭部にキャップをかぶって頂き、固定します。
そのあと刺激部位の決定に入りますが、刺激部位の決定は重要な作業なので、初回時はここである程度時間を要します。

◆刺激部位の決定

TMS効果を最大化するため、刺激部位の決定は非常に重要です。背外側前頭前野の位置は大体決まっていますが、個人差が大きく個人個人で決定する必要があります。拇指の運動野と前頭前野の関係はほぼ決まっているので、まず運動野の場所を決めることが必要です。そのために左右の拇指筋の筋電図電極を拇指のところに設置し、運動野を単発刺激し筋電図を見ながら正確な場所を探っていきます。同時に静止時運動閾値を決定します。この作業は多くの場合は1時間以内で終わりますが、困難な場合は人によっては日を要することもあります。この過程は以後の刺激の基礎になるものなので、必須であり慎重に行います。これをやらないと、TMSをやる意味が無くなります。

左背外側前頭前野への高頻度刺激
10Hz4秒間刺激、26秒間休息
合計3000発、所要時間37.5分

右背外側前頭前野への低頻度刺激
1Hz持続刺激 合計2400発、所要時間40分

※刺激中、終了後に、局所の疼痛、頭痛、不快感がでることがありますが、施術をかさねることで消失していきます。

よくあるご質問

Q 仕事や通院が遠いため、頻回に通院できません。どうしたらよいですか。
A
毎日連続が理想ですが、それが困難な場合、効果を減衰させないため週2回は施術を受けてください。
また、一日に2回連続して施術することも可能です(aTMS)。それによって通院日数を減らすことができます。
aTMSのa は、augmentedのことです。arTMSとも表記します。
Q TMSとrTMSはどう違うのですか?
A
多くの場合ほとんど同じ意味で使用されます。TMSはTranscranial MagneticStimulationの略、rTMSはrepetitive TMSのことで反復刺激を強調した表現です。
Q TMS磁気刺激治療は、年齢や性別に関係なく誰でも受けられますか?
A
小学生から高齢者の方まで可能です
Q TMS磁気刺激治療に、副作用はありますか?
A
刺激部位の皮膚の違和感程度で、大きな副作用はありません
Q TMS磁気刺激治療は、何回受けると効果がありますか?
A
刺激部位の皮膚の違和感程度で、大きな副作用はあ効果を安定させるため最少20回は受けることが推奨されますりません
Q うつ病以外の病気でもTMS磁気刺激治療で症状は改善しますか?
A
双極性障害(躁うつ病)、パニック障害、社交不安障害、強迫性障害、PTSD、認知症、統合失調症などが適応になります。
Q 遠方からでも通うことができますか?
A
当院では、北海道から来られ宿泊滞在されて治療をうけられた患者さんがおられました。
Q 医院によって金額が異なるのはなぜですか?治療費が高額なのはなぜですか?
A
自費診療なので、公定価格はありません。その施術者の経験と知識によって価格が決められていくと思われます。
Q 現在投薬治療中ですが、副作用がひどく困っています。
A
薬物的な副作用は一切ありません。皮膚の違和感も、電源を切れば(終了すれば)、消失し後に残ることはありません。
Q 怪しい治療ではないのでしょうか?
A
2008年、米豪加が参加した大規模ランダム化比較試験で米国FDAが承認し、以後欧州で追従されています。先進国の中で日本が最も遅れています。

費用

20分コース

rTMSの刺激プロトコールを改良することで刺激時間を20分(従来の半分)に短縮することが可能になりました。

従来のものと同様の効果を得ることができます。

1回:¥9,000(税込)

40分コース(conventional/complicated)

欧米で広く行われている世界的に標準的な方法です。
問診、心理テストの結果から刺激部位、刺激方法を検討していきます。

1回:¥15,000(税込)
20回一括払い:¥285,000(税込)

20分コース

rTMSの刺激プロトコールを改良することで刺激時間を20分(従来の半分)に短縮することが可能になりました。

従来のものと同様の効果を得ることができます。

1回:¥8,000(税込)
20回一括払い:¥152,000(税込)

Ⅲ.パーキンソン病用

グルタチオンを含有した脳点滴との併用をお勧めします。

1回:¥8,000(税込)
20回一括払い:¥152,000(税込)

TMS(磁気刺激治療)症例報告

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告38

ブレイン フォグ
男性 50代後半

30代、40代でうつ病の再燃を経験された方で、2年前にコロナ感染を経験されています。現在はSDSでみる限りうつ状態とはいえませんが、コロナ以来、ずっと頭の爽快感がえられずモヤがかかった状態がつづき、人の名前が出てこない、活字が頭に入ってこない、会議の進行についていけない、睡眠の質が悪い(目が覚めてしまう)等の症状が続いていました。磁気治療4回目あたりから「よさそう」と言われ始め、10回目で「効果が上がっている」とのことでした。
20回終了時でブレイン フォグの指標は大幅に改善し正常状態になり、睡眠も問題なくなりました。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告37

ブレイン フォグ うつ病
女性 10代半ば

小学生高学年時に学校でのストレスから元気がなくなり
頭がもやもやして、朝はめまいに悩まされました。それでも進学校に進み
ましたが、勉強に集中できなくなりました。頭のもやもやは続き、
いつも心がすっきりせずぼうっとした状態でいました。心理テスト(SDS)もつよい
うつ状態を示していました。同時にいわいるブレインフォグという、
頭に靄がかかったような、覚醒しているのに頭が回らない状態も
つよく見られました。ただ、ブレインフォグを疾患単位としてよいのか、
単なる一症状なのか、うつ病とブレインフォグを厳密に区別することは不可能です。
しかし、うつ病とは診断できない方でブレインフォグを訴える方がいるのも
事実で(次回紹介します)、心理テストを実施しない限り解りません。
20回の磁気治療後、表情、会話が明るくなり、頭のもやもやも解消されました。
うつ状態の改善は完璧ではありませんが、ご本人の満足度が高いので終了としました。


最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告36

難治性うつ状態
男性 60代後半

東北地方在住の方で、30代半ばから意欲減退、倦怠感をつよく訴えるようになりました。
慢性疲労症候群、男性更年期障害などの診断を受け薬物療法を行いましたが、
効果は見られませんでした。一方で軽躁状態、易怒性もみられ周りのものに
暴言暴力をふるい浪費もみられたことから、双極性が本体と考えられる状態でした。
薬物抵抗性がつよいため、電気けいれん療法 (mECT) を6回実施、著効が得られましたが、
せん妄、健忘も起こり、うつ状態も再燃しました。副作用のほとんど見られない
磁気療法を周囲の方もご本人も希望され、実施となりました。磁気反応性は
よいとはいえませんでしたが、満足できる状態に至るまでに1回40分、30回を要しました。
SDSで判定した場合効果は中等度でしたが、QIDSでは十分な効果が得られていることが
分かりました。また、躁状態は消失し、平穏状態に至りました。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告35

全般性不安~社交不安 過食
女性 20代半ば

高校生のときに漠然とした不安を感じて以来、いつも不安感にとらわれている
状態が続いていました。満員電車、バスではしばしばパニック発作に襲われて
いました。近医受信し、不安障害、躁うつ病の診断を受け、ずっと薬物療法を
続けてきましたが、まったく無効でした。人の目が多いところが苦手で、
結婚式場で自分の名前を書く、会議で意見を言う、すでに多くの人がいるところに入っていく
などの状況で、つよい恐怖/不安に囚われて固まってしまうことがありました。
罪悪感を伴うつよい過食行為も抑えることが出来ませんでした。
退職され自宅療養になったのを機に磁気治療をうけることに
なりました。初めの3~4回は効果が見られませんでしたが、5回目くらいから
効果を実感されるようになり、20回終了後躁うつ状態は解消され、落ち着きが
見られるようになりました。不安、恐怖はほぼなくなり、社交不安は実質的に
問題のない状態になり、自信が得られたようです。過食は全く見られなくなりました。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告34

社交不安障害
男性 20代前半

学術関係のお仕事をされている方で、3カ月前から寝不足、集中力低下、理解力低下を訴えるようになりました。表面的にはうつ状態が強いようにみえますが、心理テストを実施すると中等度のうつ状態とともに、社交不安があり、さらに不安よりも恐怖感が強いことがわかりました。20回の磁気治療後、うつ状態、社交不安、恐怖は著名に改善しました。

今回の場合、患者さんご自身はうつ状態を前面に訴えておられましたが、お仕事上の衆人環視での口演が大きなストレスになりうつ状態に至ったと考えられます。患者さんの病因を探り診断を付ける上で、問診だけでは全体を捉えることはできません。この状況下で心理テストは、患者バイアス、医師バイアスを是正し、MEASURE-BASED CURE(MBC 測定に基づく治療)のための強力な手段になります。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告33

自閉症スペクトラム障害 ASD
女性 10代後半

中学、高校時代ほとんど登校できませんでした。大学生になっても夏休み前から登校できなくなっていました。もともと親しい友人が作れず人間関係を円滑に営めないのことの自覚がありました。また日常生活が乱れることに強い不安と怒りを抱きました。心理テストからはご本人もあまり自覚していない双極性障害、注意障害も併存していることが判りました。
自分の思いとおりにならないとき、パニック的になってしまうのはこの性向からも由来していると考えられました

磁気治療実施のあと、今まで見られなかった微笑みが会話の随所で見られるようになり、大学への意欲が出てきました。さらに躁うつ状態とADHDもいちじるしく改善していました。ASDについてはもう1クールやるべきでしたが、ご本人の都合により一応終了となりました。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告32

統合失調症 双極性障害
女性 10代後半

小学生のころから幻聴がありました。当院に来院されるまできちんとした治療はなされませんでした。
幻聴、監視されている考えが漏れる(考想伝播)、思考奪取、悪口を言われる、などの陽性症状とともに気分の上下が強く家族に対し乱暴暴言が見られました。一時ラモトリギンが投与されましたが湿疹が出たため中止となりました。磁気治療を希望されましたが、症状が強いため向精神薬との併用で開始しました。

寛解まで磁気治療40回を要しました。現在最少量の薬物療法を行っていますが、精神症状ほぼ消失、 気分は安定して穏やかになり、大学受験に成功し充実した大学生活を送っています。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告31

認知症
女性 70代後半

やったこと、言われたことをすぐ忘れる、同じことを何度も周りにの人に聞くなど、記憶保持困難が続いていました。3年前にMRIでラクナ梗塞を指摘され1年前に一過性脳虚血発作TIAを経験しています。現在アリセプトと降圧薬を服用中ですが、認知機能改善は見られていませんでした。

20回磁気治療実施後、記憶保持がよくなり、前回の会話の内容を言えるようになりました。MMSEでは計算能力の改善が見られ、CDTでは全体の絵のバランス、ハリの長さの改善がみられました。軽度のうつ傾向も良くなっています。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告30

そう(躁)状態、悪夢、睡眠不良
女性 10代後半

生徒会活動を活発にされる聡明な女子高校生の方ですが、半年前からうつ的になり自分の中に別人格がいるような気もしてきました。悪夢にうなされ十分に寝ることができず動けないことが多くなりました。心理テストからもともとうつ状態より躁状態が強い方であること、悪夢のため睡眠の質が悪く昼間の活動が妨げられることがわかりました。20回の磁気治療後、うつ状態は解除され、躁的過活動はなくなり、よく眠れるようになりました。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告29

躁うつ病(双極性障害)
女性 40代前半

お子さんの病気の看病疲れ、夫の非協力をきっかけに、心が興奮しやすくなり多弁、同じことをぐるぐる考えてしますなどの症状が出てきました。
近医心療内科で双極性障害の診断をうけました。薬物療法を嫌い、漢方、ハリや他院で磁気治療をうけましたが改善みられず、来院されました。

初診時の心理テストは典型的な躁うつ病状態を示していましたが、20回の磁気治療により、気分の上下は解消され反芻思考も見られなくなりました。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告28

難治性うつ病 不安障害 強迫性障害 拒食症
女性 40代後半

20年前パニック発作で発症。パキシルで治療しても効果得られず、他の抗うつ薬ではめまい、悪心がつよく服薬できませんでした。

遠距離のため通院に時間かかりますが、他に治療方法がないため磁気治療をすることになりました。いろいろな要素を持っている方で、強い抑うつ気分、意欲喪失、自己否定感が強く、強い予期不安にとらわれ外出がつらい状態が続いていました。

このような状況で時間がゆっくり経過することに我慢できず強いこだわりを示していました。またダイエットを契機に拒食症になっていました。

うつ状態の改善は明らかに不十分ですが、20年かかっても得られなかった効果が2カ月ほどで得られたこと、通院がつらいとのことで終了としました。ほかにも、不安感は減り散歩もできるようになり、こだわりも減って拒食はなくなっていました。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告27

精神病症状をともなった双極性障害
女性 30代前半

十代後半から気分変調をきたし、うつ病と統合失調症の診断を受けておられました。抑うつ気分は強かったですが、一方で衝動的に高価な買い物をしてしまう、気分高揚感がみられる、怒りが強いことなどから双極性障害と再診断されました(MDQ12)。また、監視されている、会話が盗聴されている、人の目が恐いなど妄想型の統合失調症が併存していることが判りました。

磁気治療20回実施後、まえは職場で怒鳴られるとパニックを起こしていましたが、そのようなこともなくなり、人に見られている感じもなくなり、撃たれ強くなり気分の波がなくなったと言われました。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告26

社交不安、全般性不安
女性 30代前半

5~6年前にパニック障害を経験された方で、半年前から漠然とした不安を感じるようになったそうです。明確な理由のない不安、恐怖、予期不安がみられるとともに、大勢の前で話をしたり、会議で意見を言う状況につよい恐怖を感じるようになりました。

心理テストの結果から不安のレベルは中等度で、症例24と比べ著しいものではありません。しかし妊娠ご希望で、磁気治療を選択されました。途中ゴールデンウィークにかかり一時的に治療が中断しましたが、大きな影響なく順調に回復され、「打たれ強くなった」「人前で喋るのも大丈夫」と言われるようになりました。テスト結果もすべて正常範囲にもどっています。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告25

抜毛症
女性 高校生

小学校高学年から髪の毛を抜く癖がみられ、抗うつ薬内服や磁気治療を受けたことがありますが、効果がみられないまま経過してきました。最近は抜毛行為自体につよいストレスを感じ、それを我慢するのも強いストレスを感じるようになり錯乱状態になると訴えておられました。

心理テスト上も抜毛状態は最悪の状態で、うつ状態もつよいものでした。磁気治療初回で「気持ちよかった」と言っていました。4回目で「抜毛していない」「抜きたい気持ちもない」といい、8回目くらいで明らかに毛が生えてきていました。20回後抜毛行為は完全に消失し毛が生育していました。うつ状態も不完全ながら回復していました。しかしこの症例に関しては、諸事情から1回の施術が20分と短かったこと、20回で止めてしまい維持療法をしなかったことから、1か月後に再発がみられました。

私どもの経験から、磁気治療といえども万全ではなく、実施されるのであれば1回40分、20回で一応経過を見て、場合によりさらに追加施術するか維持療法をすることをお勧めします。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告24

社交不安
男性 中学生

11歳に頃から不安で震えるようになり過呼吸パニック発作をおこし、遅刻欠席が増えていきました。また、グループ参加、あらたまった場所での会食、知らない人に電話する、ホームルームで意見を言うなどの社会性が求められる行為につよい恐怖を伴うようになりました。

来院時、つよい社交不安に捕らわれていたことが判ります。LSASJは107で、重度の社交不安状態を示しました。それによって軽度のうつ状態になっていました(SDS)。磁気治療3回目あたりから効果を感じ始め、4回目終了時には「よい感じ」と言うようになりました。途中YouTubeで薬物依存の怖い映像を見て、またおそろしくなってきたといっていましたが、少なくとも治療中はわざわざ効果を打ち消すようなものは回避すべきであるとアドバイスしました。20回終了後は劇的な改善がみられ、社交不安、うつ状態ともに正常範囲に回復しました。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告23

アルハツイマー病
女性 70代後半

1年前に認知症の診断を受けた方で、半年前から症状が強くなり記憶が不確かで、新しい記憶が持続しないようになりました。今日の日付が言えない、計算ができない、ほんの2、3分前のことが思い出せない、などの症状が顕著に出ていました。また表面上は明るい方ですが、心理テストから軽いうつ傾向がみられました。

磁気治療前MMSEは18で非常に低い点数でしたが、20回磁気刺激後は25まで回復し、文章構成力も刺激前は18文字の単文でしたが、刺激後48文字・読点2個の複文が構成できるようにました。うつ傾向も正常に復しました。現在この状態を維持するため2週間に1回の維持療法を行っています。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告22

躁うつ病、不安~恐怖
男性 40代前半

他施設で薬物療法やTMSシータバースト30回をうけましたがあまり改善せず、来院されました。抑うつ気分、希死念慮などがみられる一方、過剰な自信、過活動、多弁、多飲がみ
られました。また飲食時での対人恐怖、上位の人に対しつよい不安、恐怖を抱くようになっていました。

上表から、患者さんはつよい躁状態と中等度のうつ状態を併せ持つことがわかります。反応性のよい方で磁気治療4回目で効果を実感され、6回目で不安が解消されて、残り14回でこれらの効果を強化していきました。20回終了時の結果からわかるように、躁状態、うつ状態ともに解消され、不安、恐怖も感じなくなっておられます。現在、2週間に1回の維持療法を行っています。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告21

強迫性障害、うつ病
女性 30代前半

2年前に他院心療内科でうつ病の診断を受けている方ですが、高校生のころから強迫性がみられ、薬物療法は無効だったようです。強い気分の落ち込み、希死念慮、不安があり、また歩いていて人に危害を加えてしまうのではないかという強迫思考がみられました。さらに戸締り、火の不始末の確認などの強迫行為がやめられませんでした。

上表から、重度の強迫性と強いうつ状態であることがわかりました。外見上は明るい方なので躁的要素があるかと考えられましたが、心理テスト上は否定されました。磁気治療開始後、効果発現は上下がみられ、集中力が上がったかと思うと、加害恐怖が憎悪したりしましたが、16回目くらいからやっと安定して改善していきました。20回終了の時点で、強いうつ状態は完全に消失し、強迫性も完全になくなっています。しかし今までの病歴が長いことから、1~2週に1回の維持療法を行っています。現在国家資格を目指して頑張っておられます。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告20

不安障害、パニック発作 女性 40代後半

ほぼ1年前から外出すると、つよい動悸や体の震えを感じるようになり外に出るのが怖くなってきました。自宅にいても不安感が消えず、パニック発作を起こすようになってきました。他院の診療内科ではうつ病と診断され薬物療法を1年続けていましたが改善なく、磁気刺激療法を受けることになりました。外出、高所、電車、人混みにつよい恐怖を訴えておられました。 上の表に示すように来院時、強い不安とうつ状態にとらわれておられ、磁気治療を開始しま、した。6回を過ぎたころからようやく効果が出始め、対人恐怖が減り表情がゆるんで来るのがわかりました。20回終了時点で不安を感じることはほとんどなくなり外出も何のこだわりもなくできるようになりました。大幅な改善がみられるものの、うつ状態がまだ完全には解消していないことが上表からわかります。このため維持療法として2週に1回磁気治療を続けることになりました。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告19

パニック障害~恐怖症
男性 10代後半

1年前から、人混み、狭い場所、電車に乗ることに恐怖を感じるようになりひどい場合は吐き気、強い緊張、冷や汗、強い動悸の発作を訴えるようになりました。またテスト前は不必要に緊張し、多人数の前での発表は苦手で頭痛、悪心、腹痛を催しました。すでに他院での磁気治療を経験済で、多少効果があったとのことですがすぐに効果は切れてしまったようです。   

来院時SDS44で軽度のうつ状態、不安を診るBAIは24で中等度の不安状態でした。20回rTMSを実施したのち、SDSは27に低下し正常状態になりBAIは4まで減少し、パニック障害レベルテストも2/30になり不安、恐怖は払拭されました。いまでは何のためらいもなく外出できるとのことです。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告18

双極性障害(躁うつ病)
男性 20代後半

10年以上うつ状態で苦しんでこられました。薬物療法は奏功しませんでした。
うつ病と診断されてきましたが、お金を使いすぎたり、怒りやすくなったり、悪口を言われていると感じたりすることから、躁的要素があると判断されました。2年ほど前に退職され、現在自宅療養されています。初診時うつ状態をみるSDSは70の高値で、躁状態をみるMDQは7で躁状態の境界線上にあると考えられました。rTMSを20回実施後、SDSは53、MDQは3に低下し大幅な改善が見られましたが、患者さんの実感としてはまだまだ不十分なため、さらにrTMSを20回追加しました。計40回rTMSののち、SDSは37、MDQは0になり正常範囲にはいり、患者さんの顔に笑顔がもどってきました。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告17

うつ病
男性 30歳代

中高生のころから、たくさんの人が集まるような所が苦手で、そのような環境では気分が落ちてしまい人間関係を構築するのがうまくいかなかった。

朝起きるのが苦手になり、新規な職場での順応が悪く自分が必要とされていないのではないかとの自責の念がつよくなり、数年前からこの考え自体が病的なのではないかと思うようになったそうです。

心療内科、精神科には行かれたことはない方です。

初診時SDS 66で、重度のうつ状態でした。

磁気治療20回実施後SDS 36と正常状態に入り終了となりました。

現在、以前のように思い悩みすぎることはなくなっています。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告16

難治性うつ病~躁うつ病
女性 20歳代

むかしから人間関係が苦手な方でしたが、社会人3年目で会社から高ストレスを受けて呼吸困難をおこし、無気力、抑うつ気分が強くなり、また月経前後の下腹部痛、腰痛、悪心が憎悪していきました。
一方で急に多弁になったり買い物をし過ぎるなどの行為も見られました。来院時SDSは52の高値でした。サインバルタ、イフェクサー、ジェイゾロフト、デプロメールまたラミクタールなどの薬物に対する反応性が悪く、3か月、6か月におよぶ休職を2回とりましたが改善が見られず、初診から2年以上経過した時点でのSDSが65と悪化していたためTMSを導入することになりました。薬物療法は効果がなかったことになります。

40分のTMS3回目で不安感が減少しはじめ、7回目で安堵感が出るようになりました。しかし「1回抜くとつらい」とまだまだ不安定でした。20回終了時のSDSは49で大幅な改善はみられたもののまだ不十分であるので、さらにTMSを続行しました。どんどん表情はあかるくなり口調にも落ち着きと安定性が出てきました。40回目のSDSは33で素晴らしい改善がみられたので、TMS終了としました。現在、妊娠のための減薬が可能になり、どんどん薬が減っています。

本症例からわかることは、①難治性の場合は40分で40回程度の施術が必要であること(時間はかかりますが薬物治療とは比べものになりません。2年以上―103日の差です)②103日間に40回のTMSを行い、1週間に2.7回のTMSを行ったことになり、施術の高頻回性も有効性に寄与したと考えられます。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告15

過食症
女性 20歳代

一人暮らしでストレス多く、初診時の1年前から週3回のペースで過食をしていました。
肥満恐怖もあり嘔吐を伴っていました。薬物療法は一時的な効果はありましたがすぐに再発を繰り返していました。
初診時、過食評価尺度BITEで症状度24、重症度14で重度の過食症でしたがTMS20回未満で過食行為は消失しました。その後数か月の時点で過食は再発していません。当然、嘔吐もなくなっています。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告14

強迫行為
女性 20歳代

2年前から、戸締り確認、会社の注文書、請求書、データ処理などの頻回の書類確認を止めることができず、非常な苦痛に苛まされていました。近医の心療内科で強迫性障害の治療を受けましたが、効果なく放置。遠隔地から来院、1か月宿泊され治療を続けました。

初診時Y-BOCS 24/40とかなりレベルが高いことがわかりました。効果発現ははやくなくTMS10回近くになってから急に表情が明るくなり、東京見物に出かけるようになりました。

遠隔地からの来院のため十分な回数をこなせませんでしたがTMS18回で、Y-BOCS 0/40となったため治療終了としました。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告13

強迫性障害 不潔恐怖
女性 55歳

この方も他院にてTMS40回しましたが無効で、当院でのTMSを希望されて来院されました。
子供の教育が思うようにいかず、うつ病の診断を受け薬物療法、TMSを受けていました。
ある言葉が非常に気になり、苦痛を引き起こされ、抵抗できない、魚を触ると何回も手を洗うなど症状がつづいていました。
来院時、強迫性のレベルをみるY-BOCS 11/40(8以上を強迫性ありとします)、SDS 39でごく軽度のうつ状態でした。
TMS40回実施後、Y-BOCS 0/40、SDS 31となり強迫症状は消失し回復されました。
現在1週間に1回維持療法をされています。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告12

軽度認知障害MCI うつ病
男性 76歳

母系にうつの方が多い家系です。もともと元気な方でつい最近まで英語の先生をされていました。
社交ダンス、老人クラブの会計までされ評判がよかったそうです。昨春にうつ病を発症され、他院にてTMSを40回以上うけましたが改善せず、当院でのTMSを希望されました。
認知レベルをみるMMSEは23、SDSは 66で軽度認知障害とうつ病の混合状態でした。
TMSを20回実施後、ときどき脳点滴も併用しMMSE28、SDS 42になり、認知、うつ病ともに問題のない状態になりました。うつ状態についてはもう少し実施した方がよいですがこれで様子を見ることになりました。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告11

高齢者の躁うつ病 軽度認知障害MCI
女性 73歳

59歳時にうつ病の診断のもと治療を受け、6ヵ月でよくなっていました。
夫婦自営で盛んに商売をされていましたが、半年前からしだいに元気がなくなり商売上の細かい注文に対応できなくなったり、物忘れが目立つようになりました。
4が月前にうつ病の診断を受け、抗うつ薬を服用するも効果なし。
家族とともに来院時、こちらの質問にも答えられない状態でした。
SDS68、DSMVから双極性障害と診断し直しました。
TMSを、グルタチオン含有の脳点滴とともに10回実施後、仮面様の表情が消え、笑えるようになり、質問にも答えられるようになったので、MMSEを実施、24で軽度認知障害の状態でした。
さらにTMS+脳点滴10回実施、表情はさらに明るくなりいつも通りの感じになり、元気なときを髣髴とさせるようになりました。
この段階で、SDS36、MMSE29となり、大幅な改善が見られました。
今後、維持療法として2週間~1か月に1回の割で、TMS+脳点滴を実施していく予定です。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告10

慢性疼痛
男性 40歳

10年前から、明らかなきっかけが分からないまま右肩の痛みを感じるようになりました。
さまざまな医療機関、さまざまな医療を受けましたが効果的なな改善は見られず、しだいにうつ傾向が出てきました。
現在は首、肩、肩甲部に疼痛があり、サインバルタ、ミオナール、マイスリー等を服用されていました。
来院時、疼痛自己評価VASは3.8/10、SDSは48で軽度のうつ状態でした。
rTMS30回実施+グルタチオン含有の脳点滴を併用した後、VASは2.4/10に減少し、好きな野球が楽に出来るようになりSDSは38でうつ状態も寛解しました。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告9

難治性躁うつ病
他院でのTMS経験者 男性 37歳

ストレスから10年前にうつ状態になり、いままで利用できるほとんどすべての薬物を経験しましたが、改善しませんでした。
他院にて光トポグラフィーを受け、うつ病と診断され、TMSを40回受けましたが
あまり改善が見られませんでした。
当院に来られ、再度TMS治療を希望されました。初診時SDS 60、DSMVから躁うつ病と再診断しました。
YBOCS 13で強迫傾向も見られました。
TMS20回実施後、SDS 39に大幅に減少、YBOCSも4となり正常範囲に入りました。
しかしご本人の実感はまだまだ回復とは言えないとのことで、
今後の治療継続が必要です。

※ 患者さん自身の健康実感度と客観的指標度はかなり喰い違うことがあります。
両者を総合的に判断していく必要があります。
最近、光トポグラフィーがあたかも確定診断のように喧伝されていますが、
この装置はその時点での脳血流量を測定するだけで
病気の経過全体を観測するわけではありません。とくに重要なうつ病と躁うつ病の鑑別は、
今回の例のようにあてになりません。
日本うつ病学会は、光トポグラフィーによる判断はあくまで補助的なものであると警鐘を鳴らしています。
日本うつ病学会 声名 2016年11月29日をご参照ください。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告8

強迫性障害
男性 17歳

受験生で通学時に不快事があり、そのことがきっかけとなり、いままでの不愉快な思い出が繰り返し思い出されるようになり勉強が手につかなくなり、うつ状態も併発していました。

一般に、強迫症とは戸締り・火の元の過度の確認、しつこい手洗いから、不快な観念の侵入的な反復的な想起そしてその不安を打ち消すための繰り返される行為(確認、祈り)が続く状態です。
本人自身も不合理を理解していることが多いですが止めることができません。
非常に時間浪費性で消耗的で、社会生活、個人生活に多大の支障を来し、薬物療法、
心理療法がうまくいかない、治療抵抗性のつよい疾患です。

彼の場合、来院時強迫状態を見るYBOCSは20、CMI強迫性項目 5/6、SDS 59で、
中等度以上の強迫性とうつ状態が見られ、治療抵抗性が予想されました。
40回のrTMS後、YBOCS 10、SDS 47に劇的に低下しました。薬物療法ではここまで来るのに数年はかかる、
あるいは強迫症状はおさまらないと考えられます。この状態でもまだ不十分で、現在rTMSを続行中です。
終了次第、またご報告します。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告7

躁うつ病 ADHD
女性 46歳

もともと明るく元気、活発な方ですが、ストレス耐性が弱く何かあるとすぐにダウンしてしまう性格です。
1年前にうつ病の診断を受け薬物療法を続けていますが改善が見られず休職を始められた頃に来院されました。
初診時SDS 67でうつ状態がかなり進んでいました。
一方で、気分亢揚性、多弁、観念奔逸などがもともとあり、躁うつ病と診断し直されました。
さらに、物事を順序立てるのが苦手、約束を忘れる、複雑な問題を後回しにする、
何かソワソワするなどの症状もあり、ASRS~v1.1 6/6で、ADHDを併発していることがわかりました。
一般に躁うつ病とADHDの併存はよく見られることです。
20回TMSの予定で開始ししたところ、反応性の良い方でどんどん目に見えて元気になられましたが15回目あたりに、問題が発生し、再びうつ状態が再燃しました。結局計40回の実施になりましたが、
ストレス耐性は向上し、問題が出ても、あわてなくなり、おちついた元気さを取り戻されました。
職場復帰を明日にでもと言っておられました。
終了時SDS 22
終了時ASRS~v1.1 0/6(ADHDの消失)
終了時ASRM 0/20(躁状態の消失)

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告6

単極性うつ病 外国出身の方
女性 45歳

日本人男性と結婚され子宝にも恵まれ幸せな家庭を築いておられますが仕事のストレスから8年前にうつ病を発症されました。
もともと内向的で発散できない性格と自己分析されます。
入院の経験もあり、現在抗うつ薬、睡眠薬などによる標準治療を受けていますが改善が見られず、来院されました。
初診時SDS 53で、まずは休職に入られ、20回の予定でTMSを開始しました。
反応性がよい方で、10回ほどの時点で仕事に復帰したいと言われるほどになりました。
20回終了時SDS 39となり、ご本人のご希望により終了としましたがまだ不十分なところがあるので、しばらくの間1週間に1回実施することにしています。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告5

うつ病~躁うつ病 治療抵抗性
男性 30歳

9年前に発症。3年間心療内科で治療を受けていたが、中断。
その後4年間、何とか仕事はできていたそうです。
集中力低下、記憶力低下が強くなり、都心の某有名メンタルクリニックにて治療受けるも効果なく、当クリニック受診2週間前から休職に入っていました。
初診時SDS 56、ASRS 4/6の状態で、躁状態については明確ではありませんでした。
TMS20回実施後、SDS 42、ASRS 0/6と著明に改善するも
ご本人の体感は十分でなく、さらに実施を希望されました。
この時点でCMIで神経症的要素をみたところ、抑うつ4/6、恐怖性5/6、不適応11/12、怒り7/9、ヒステリー5/7、過敏性6/6と高得点でした。
TMSさらに20回実施後、SDS 35になりさらに改善しCMIで抑うつ性0/6、恐怖性3/6、不適応7/12、怒り4/9、ヒステリー2/7、過敏性4/6と改善しました。
躁状態を見るASRMは2/20で問題がないことが判りました。
ご本人も体感的に満足され、9年間つづいた不調が、40回のTMSで改善したことになります。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告4

双極性障害
女性 40歳

2度の離婚に傷つき、9年前にうつ病を発症。
うつ状態で動けない状態がつづいていたそうです。
精神科に通院し薬物療法をおこなっていますが、明らかな改善はみられていません。
当クリニック初診時SDS 53で、DSMVから二相性を有すると診断されました。
20回TMS終了時、SDS 41となり著明に改善されましたがご本人としては更なる体感を希望され、さらに10回TMSを追加されました。
この時点でSDS 33となり問題なしと判断し、治療終了としました。
お元気になり、新たなお見合いにチャレンジされています。
お仕事は当分の間しないことにしました。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告3

躁うつ病 難治性うつ状態 ADHD
男性 36歳

仕事のストレスのため3年前から気分変調に気付く。
3週間の休職中に来院されました。
初診時SDS 58で、仕事のストレスがつづくためうつ病の診断のもとただちに休息をすすめ、6か月の休職をとりました。改善が見られたので復帰。
しかし仕事のストレスがつづき、2年間の薬物療法では改善が見られないためTMSの実施を決定。
このときのSDS 57で、ほとんど改善が見られていないことがわかりました。
さらに躁状態も併発していること、ASRS-v1.1 5/6でADHD要素もつよいことがわかりました。
TMS20回出来るだけ連続的に実施。
SDS 46、ASRS-v1.1 2/6になり、著明に改善しました。
SDSは40以下になっていませんが、諸々の事情からあとは薬物療法と生活改善で治療していくことになりました。

最近のTMS(磁気刺激治療)症例報告2

双極性障害、ADHD
女性 30歳

初診時、強い不安、抑うつ気分、意欲喪失、外出困難を訴えて来院。十代半ばから不安定であった自覚があったそうです。
以前、某医科大学精神科で認知行動療法を受けるも、改善なし。
当初、抑うつ状態が前面に出ており、SDS 62の高度のうつ状態でしたが、
後に二相性を有することがわかり、双極性障害が主体であることが判明しました。
その後2年間、抗うつ薬、向精神薬、抗てんかん薬など、薬物精神療法を行いましたが寛解が見られず、TMS実施に移行することを決定、
この時点でのSDS 59で、ほとんど改善していないことがわかりました。
またASRS-v1.1では5/6で、ADHD的要素も強いことがわかりました。
TMS30回出来るだけ連続的に実施。
この時点で、SDS 49に減少。
まだ不十分であるため、ご本人とご主人と相談の上さらにTMS10回実施追加。
合計30回後に、SDS 36に減少、
ASRS-v1.1も3/6に低下し、ADHD症状も軽減しました。

2年間の標準治療で改善が見られなかった症例が、
延べ日数31日間のTMS治療で寛解したことになります。

表情は明るくなり、漠然とした不安感は消え意欲が増し、以前通うのが恐怖であった趣味の習い事にも元気に通われています。

最近のrTMS(磁気刺激治療)症例報告1

うつ病、長野から毎日通院されました。
45才男性

6年間抗うつ薬で治療されていましたが、改善の見られなかった方です。
初診時、SDS65点の高点数でしたが週5回連続で合計20回TMSを受けられました。
※SDSはうつ状態の自己評価尺度で、40以上をうつ状態と判定します。
TMS終了時SDSは32点に減少し、寛解されました。
当初の沈鬱的な表情が、笑顔に変わっていました。

ポイント

出来るだけ毎日TMS施術を受け効果が減衰する前に次の効果を上乗せすることです。間をあけては意味がありません。
そうすることで神経栄養因子の遺伝子発現につながると考えられます。

磁気刺激治療rTMSの現状  2020-2021年現在

日本は磁気刺激治療を含め電磁気による経頭蓋脳刺激療法における後進国です。大学医学部で学生用のrTMSカリキュラムはなされず、卒後専門研修においても電気けいれん療法までで、rTMSはほんの二、三の大学精神科で行われる程度です。拙著で述べたように、研究発表に至っては欧米にくらべるのも恥ずかしくなるほど僅少です。余計な話ですが、おとなり中国では磁気治療の基礎研究、臨床とも目覚ましく進展し日本をはるかに凌駕し、電脳の発達とともに脳科学に対する国家の明確な意志が観取されます。

このような状況下、日本における街医者レベル(わたしも含めて)の磁気治療者はほとんどが独学して臨床を実施しているのが実情です。学生の頃はその言葉、概念さえなかった頃の者が行っているわけですから。その意味では大学研究者といまのところは大差ないかもしれません。新しい技術の勃興期はどうしても玉石混交の状態になります。学問、臨床としていまだ世界的に確立していないこともあり規範ができていない分、進取の精神を発揮するものがいる反面、いい加減にやってしまうものがいるのも事実です(安かろう、悪かろうの世界です)。未だ明確にはわかっていない効果メカニズムを明らかに間違った脳解剖図でもって提示するもの、おどろおどろしい経歴や専門用語を使って喧伝するもの、つよい薬物抵抗性をしめすうつ病患者すべてに効果があるように言うもの、などなど。医学のどんな分野でも、100%治す方法などありえません。

磁気治療はいまだ多くの問題を抱えていますが、例えば、刺激部位選択の問題があります。うつ病の場合教科書的には背外側前頭前野を選択しますが、何例も実施していくうちに左右どちらを刺激しても、何ら効果を示さない症例がいることは実際にはよくあることです。薬物抵抗性ならぬ、磁気治療抵抗性を示す患者さんは存在するのです。これは、2007年、米・豪・加が参加した大規模臨床治験の結果からすでに明らかなことです。しかし個々の生身の症例において、効かないなどと言ってはいられません。問診、心理テストの結果を手掛かりに、今まで手に入れた知識を総動員して懸命になってhot spotを探します。それでも歯が立たないことはあります。

にもかかわらずです。磁気刺激の、薬物療法では得られない利点・魅力は、身体的負荷が非常に少ないこと、効果発現が非常に早く、副作用がほとんどない点です。薬物抵抗性の強い患者さんは、医師も患者さんも薬物療法の袋小路という迷路に入り込んでしまいそこから抜け出せず、しばしば数年が経ってしまいます(症例5916 参照)。電気けいれん療法も万能ではありません。このような状況の打開策として磁気刺激は、うつ病ばかりでなくさまざまな精神疾患に対し従来の方法とは異なる治療の場を提供しうる価値あるものです。

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薬物精神療法・漢方から新しい
磁気刺激療法rTMSまで、幅広く対応できます。